会社の名称を「商号」といいますが、この商号を決める際に、注意すべき点がいくつか存在します。段階的にご説明するのがわかりやすいと思いますので、以下に会社名を決める上での注意点を、流れに沿ってご案内します。
1.会社名に使える文字を確認する
会社名に使える文字は、漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字、算用数字と、指定された記号です。会社名の冒頭か末尾に、株式会社なら「株式会社」と会社の形態を表わす文言を付けなければなりません。
使える文字の画像
記号は、会社名の最初や最後には配置できませんが、「.」(ピリオド)に限っては、英単語を略す意味で会社名の最後に使うこともできます。
例)A.B.C.株式会社
ただし、例のように最後にピリオドがある会社名は、最後のピリオドが取れて表記されてしまったり、伝わってしまったりすることが多いです。そのため、3番目のステップで紹介する「伝わりやすさ」の点で、多少問題が生じる可能性が高い会社名になってしまいます。
2.想いや目標を込めた会社名を決める
次のステップは、会社を設立(起業)される方の「想い」や「目標」がこもった会社名を考えることです。あるいは、想いや目標ではなく、好きな単語やフレーズを会社名にするのもいいでしょう。
会社名は登記されますし、印鑑、名刺、ホームページやパンフレットなど、多くの物や媒体に記載されます。そのため、いくら手続き的には後日の商号変更も可能であるとはいえ、一度決めてしまうと現実的には変えることは難しいのです。
ですから、その時のノリで決めるのではなく(もちろん、ノリで決めるほうが良い社名になることもありえますが)、「これがしたい!」とか「これが夢だ!」とか「この単語が昔から好きだ!」というように、後で気変わりしてしまわない普遍的な社名を考えるようにしてみましょう。
3.口に出して言ってみる。他人に聞き取ってもらう。
3番目のステップは、他者への伝わりやすさの確認です。起業家さんの想いや好きなフレーズが込められた会社名であっても、他の人に伝わりにくいのであれば、商業的な発展・広がりの阻害になりかねませんし、日々の業務を行なう上でも面倒な場面が増えてしまいます。
お店で領収証を出してもらうときや、電話で営業やアポイントを取る際など、なんという会社名なのかをその度ごとに時間をかけて説明しなければならない。そんな状況に陥らないように、口に出して言ってみたり、身近な人に聞き取ってもらえるか、社名を口にしただけで、文字として書いてもらいやすいかどうか、確認してみます。
銀行振込で料金の支払いをしてもらうときなどにも、伝わりにくかったり、打ち込み間違いを生じやすい会社名は、弊害が生じやすくなります。
また、会社名にはローマ字が使えるとはいえ、ローマ時は綴りを伝えるのが難しいものです。もしローマ字自体にこだわりがないのであれば、カタカナで表記するほうがわかりやすく伝えやすい会社名になることが多いでしょう。
4.既に似た名前の会社がないかどうか確認する
想いがこもっていて、聞き取りやすく書きやすい会社名は決まりましたか?それでは、最後の仕上げとして、同じような会社名が既に使われていないかどうかの確認(類似商号調査)を行ないましょう。
類似商号調査は、これから設立する会社の登記をする法務局(出張所など)に行って、商号調査簿というものを調べます。もっとも、最近の法務局はほとんどがデータ化された商号調査簿になっていますから、実際に行なう作業は端末で会社名を打ち込んで検索するだけです。
類似商号調査での注意点
もっとも、作業自体は端末に打ち込むだけで簡単なものなのですが、多少気を付けておくべき点があります。それは、データ化された商号調査簿の検索では、漢字やカタカナ、ひらがなやローマ字といった使われている文字の種類が違うと、すべて「該当なし」の扱いになってしまうということです。
たとえば、「日本株式会社」という会社名を付けようと思ったとき、「日本」だけで検索して「該当なし」の結果を得られたとしても、「にっぽん株式会社」や「ニッポン株式会社」、「NIPPON株式会社」が既に存在している可能性があります。ですから、異なる文字で既に存在する会社名がないかどうかも、しっかり確認する必要があります。
さらに、「日本」は「ニッポン」とも読めますが、「ニホン」とも読むことができます。読み方が何通りか存在する社名であれば、別の読み方で既に存在する会社名がないかどうか、確認しておきましょう。
インターネットや商標も調べておくと安心
法務局での類似商号調査で「該当なし」の結果が得られたら、最後に念のため、インターネットで検索したり、登録商標になっていないかを特許庁のホームページなどで検索しておくほうがよいでしょう。
既に多くの人が知っているような、有名な会社名を利用してしまうと、後で法律上問題になって訴えられてしまうかもしれません。もしインターネットなどで社名が出てきたときには、その点に注意が必要になります。
また、有名な会社ではなくても、既に同じような事業を同じ会社名で行なっている会社が存在する場合には、社名候補の見直しなどを考えるほうが無難な場合もありえます。
5.会社名(商号)を確定する
上記のようなステップを経て、「問題ナシ」と評価できる社名であれば、それがあなたのこれから設立する会社の名前(商号)になります。